2007年09月18日

新聞記者の疑問

 とある新聞記者と話す機会がありました。その記者は、福祉や介護分野を中心に情報を収集しては記事にすることが担当になっているとのこと。この1年間だけでも随分たくさんの介護施設等に取材に行き、経営者とお話したそうです。その結果、素朴な疑問があるのだと言います。

 ある認知症高齢者グループホームを取材したときのこと。それはそれは、いかにも“介護サービスとはこのようなものだ”というお手本のような事例だったそうです。
 「このようなかたちで引き合いに出すのは適切とは言えないかもしれないが…」と前置きして彼が言うには、「一言で言うならば、コムスンとは対極にある経営といえばイメージがつくでしょうか?」と説明するのでした。
 
 ある地方都市でのグループホームの話なのですが、ご夫婦で始められ、最初は自己資金もあまりなかったことから、築30年ほどの古いアパートを手に入れ全面改装してスタートしました。
 テーブルや椅子なども使い古しの物を譲り受け、あり合わせの物でなんとか入居者を受け入れたそうです。1ユニット9名の入居者と職員の垣根のない会話があり、昔の大家族時代を彷彿とさせる懐かしさを覚えるホームだったようです。

 ところが5年も経った頃、そのグループホームを運営していた人は同じ町の少し離れた場所に新たなグループホームを建て始めたというのです。
 その記者は言います。「何故みんな、経営は厳しいと言いながらも、2軒目、3軒目と増やして行くのかがわからない」と。記者は、先ほどのグループホーム経営者に尋ねてみたそうです。すると「2軒目のホームは、自分の理想とする夢を形にしたものだ」との答えが返ってきたそうです。

 記者から見ると、「1軒目こそ、グループホームのモデルではないか」と思っていたのに、やはり「1軒より2軒にしたほうが儲かりやすいからだろうか?」という素朴な疑問が今も残っていると言います。
 先ほどの経営者には繰り返し尋ねてみたものの、採算面の話はついに聞くことができなかったと言っておりました。そして、同様のケースが結構あちこちで目につくと言うのです。

 この話を聞いて、私にはその経営者の気持ちがわかる気がします。正直言って、1ユニット9名だけの経営では、ほとんどゆとりはないはずです。もちろん、今はなんとか収支のバランスがとれているのかもしれません。しかし、今や築40年にもならんとする建物は、全面改装したとは言え、いずれまたかなりの修繕が必要となる可能性があります。
 今入居されている方も、ますます年齢を重ね、要介護度も重くなっていくことでしょう。そのときに対応できるようにしておくには、今のまま何もせずにはおれないからです。職員の給料も上げる必要が出てくるでしょうし、逆に、介護報酬の単価が上がる保証はどこにもないのです。

 今は亡きP・F・ドラッカー氏もその著書『現代の経営』のなかで、「…いかなる事業においても、問題の核心は最大利潤にあるのではなく、むしろ、経済活動に伴う危険性を負担し、その損失を回避するに足るだけの利潤をあげうるにはどうしたらよいかという点にある…。」と述べておられます。(6月7日当ブログ“儲けることはいけないか?”参照)


posted by のほほん at 23:49| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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