一方、我が国のIT活用は、依然として国際的にみて遅れているとも言われております。その理由として、ITユーザ(とくに企業経営者)はITの知識に乏しく、逆にITベンダーは、企業経営に関する知識が乏しいということが挙げられております。
そこでITユーザー、 ITベンダー双方の事情に通じた豊富な実務経験を持ち、経営者の立場に立って経営とITを橋渡しし、 真に経営に役立つIT投資を支援できるプロフェッショナルとして、「ITコーディネーター」という有資格者が存在します。
しかし残念ながら、その有資格者の多くはITベンダーに属する社員であったりするため、経営者の立場に立って提案できる“独立系”ITコーディネーターは少ないようです。
先日、その“少ない1人”とお話しする機会がありました。私の関心は、ITコーディネーター資格制度が2001年度にスタートして以来、その目的の達成状況はいかほどであるか、ということでした。
彼の答えは、「前進はしているが、そのスピードは遅い」というものでした。「逆に、状況が悪化していると思われる部分もある」とのこと。それは何かというと、「企業人のコンピュータリテラシーが二極化しだした」というのです。
ひと頃“デジタルデバイド”という言葉が話題となりましたが、その当時とも少し違うのは、若手社会人にパソコンを使えない人が増えていることだそうです。つまり、携帯電話のリテラシーは高いのですが、パソコンでは仕事ができないというのです。
「需要が一巡したかに見えたパソコン教室で、若者向けにWORD・EXCELといった業務用アプリケーションソフトのリテラシー教育を再度強化する必要があるのでは?」とも言っておりました。
ところで私には、1台100万円もするビジネスパソコンを、こぞって先進的経営者たちが使い始めた1981年当時のイメージが想い起こされます。あれから四半世紀が過ぎ、ハードウェアの性能は多分1000倍以上、そして価格は十分の一以下になっております。
さぞや高度な活用ができているはずと思うのですが、巷を見るとそうは感じません。そこで、先述のITコーディネーター氏に確認してみたというわけです。私の話に対して彼が言った結論は、「ITリテラシー以上に、経営者に情報リテラシーがあるか、さらに言えば、経営戦略があるか?ということだね」とのことでした。これには私も同感しました。
“ITの戦略的活用”を求めるならば、まずはその“戦略”がなければならず、我が国の中小企業経営者にはとくにこの「戦略面の強化」が必要だと思われます。そして、その戦略実現のためには、経営者自ら意思決定にITを駆使することがポイントになるでしょう。
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