2008年08月25日

過ぎたるは及ばざるより悪しき

 「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し」は、孔子が弟子の質問に答えた際の言葉(論語:先進篇「過猶不及。」)とのことです。

 実は先日、このような言葉がまさに当てはまる、いや、それ以上に悪いと思われる相談に出くわしました。
 相談者は、5年ほど前にネットショップを立ち上げた方です。もしかしたら以前にこのブログにも書いたことがあったかもしれません。北海道の地場産品を楽天市場で販売すべく開業しました。楽天の担当者に励まされながらがんばり続けて約2年。「ようやくなんとか生活できるレベルになりました!」との報告を受け、一緒に喜んだ記憶があります。
 それから半年後くらいに、「東京のある方の協力のもとに、リアル店舗を持つ」との相談があり、そのときは、これまで扱えなかった珍しい輸入品も取り扱えるので、発展の可能性が感じられました。それからというもの、彼の行動は素早く、分不相応と思われる規模の店舗物件を借りる契約を早々と済ませました。また、彼を慕っていた以前の職場の後輩を呼び寄せ、雇用しました。
 いよいよ開店という矢先、トラブルが起きました。東京の協力者とは絶縁状態となりましたが、彼はなんとか独力で分不相応の店を切り盛りしようと突っ走りました。しかし、長くは続かず、1周年を迎えた直後に閉店を知らされました。

 それからさらに半年くらい経ったころ、また私に相談がありました。「また店を持ちたい。今度は卸しの拠点も借りるつもりだ」というのです。
 しかし彼は、融資が受けられないでおりました。私は反対しました。彼が「良い物件を見つけた」と言った店は、私もよく知っている場所にありました。小売するには決してよい立地とは思えません。
 これに加えて別な場所に加工・卸し業務の拠点をも借りようとしており、銀行が融資を渋るのは当然といえる状況でした。私は、「2箇所同時に手を出すなんてもってのほか」「ネット販売で生活できるレベルの売上があるのであれば、それに注力し、店を出すのはある程度態勢を立て直してからにしなさい」と助言しました。
 しかし、とにかく前に進むことしか考えない人でした。「早く決めないと物件が他人に借りられてしまうから」と、融資の目処が立たないうちに、店舗の賃貸契約の話を進めたようです。両手の指が必要なほど金融機関に借り入れを申し込み続けました。私は基本的に反対していましたので、融資の相談には乗りませんでした。
 そうこうしているうちに、また連絡があり、「奇跡が起きた!」というのです。信用保証協会で以前にお世話になった人が、「自分が転勤する前になんとかしてあげる」と言って保証をつけてくれたというのです。「どこまで運が強い人なんだろう」と驚きました。

 しかし私はそれ以来、彼の新しい店には一度も行きませんでした。それからさらに3ヶ月くらい経った先日、突然彼が相談に来ました。
 「思ったほど、売上が伸びない。金が足りない」というのです。私は何も言いませんでした。「それ見たことか。だからあのとき反対したでしょ!」と言いたい気持ちはありましたが、そんなことを言っても何も変わらないからです。それに、彼自身、そのことは十分わかっているはずですし、私に怒鳴られることを覚悟でやってきたのだろうとも考えました。
 ところが、彼が次に口にした言葉は、予想外のものでした。てっきり借入の相談に来たと思ったのですがそうではなく、「新しい事業を始めたのだが、売り方がわからない」というのです。そのビジネスは利幅が大きく、彼はどうやら「一発逆転」を狙っているようでした。
 残念ながら、私にはその新商材を売る妙案はありませんでした。今の彼には、とにかく前に進むしか手がありません。「引き返す」限界点を超えてしまったと思われます。
 数ある相談のなかには、今回のように本当に深刻な内容にもいくつか出くわします。そんなとき私は、「これがその人の運命・生き様なのかもしれない」と思わざるをえなかったりするのです。彼を慕って入社した後輩は、とっくに解雇せざるを得ませんでした。あとで分かったことですが、彼は奥さんからも愛想をつかされ、離婚しておりました。二人で力を併せ、楽天市場のショップを軌道に乗せるところまでは良かったのですが・・・。
 「前に進むことだけを考え、引くことを知らない人」は、「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し」どころか、「過ぎたるは及ばざるより悪しき」となってしまうのだとつくづく思いました。


posted by のほほん at 23:46| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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