その会社自体は30名ほどの規模でしたが、よくある話で、社長は親会社から来た人でした。
2日間の研修でしたが、初日の朝、社長が挨拶に見えられ、しばらく研修状況を見学されたあと帰って行かれます。後日、研修結果をご報告に上がるのですが、なかなか社長には会えません。大抵、研修担当部長に報告して終わりとなります。
研修は確か4年ほど続いたと思いますが、そのうちに社長は定年で退職されたと伝え聞きました。
2ヶ月くらい経った頃、直接その元社長から電話があり、「おじゃましたい」というのです。それまで一度もそんなことはなかったのに、わざわざ訪ねて来られました。
そして「あの研修のテキストを見せて欲しい」と言います。1冊差し上げると、「この部分はどういうことであったか?」と、要所要所を質問されました。
なんだか研修の補講をしているような気分でしたが、限られた時間で精一杯説明させていただきました。
「いや〜、よくわかりました。ありがとうございます」と述べた後、「実は、来月から○○大学で経営学を教えることになりまして…」と言うのです。
なんのことはない、ご自分の講義ネタを仕入れに来られたのでした。