中小企業における会計指導は、長らく税理士さんのお仕事のようになっていました。今も、その状況はほとんど変わりません。しかし、批判をするようで申し訳ないのですが、税理士さんは税務の専門家です。当然ながら、基準となるのは基本的には税法です。
ところが、「企業経営」という視点から見た場合、税務はその一部にしか過ぎません。何が言いたいかというと、会計は企業経営において、もっと税務面以外も考慮されるべきだということです。すなわち健全経営のために、経営者は会計との付き合い方を見直す必要があります。
実はこれは、私の発案ではありません。このように主張しているのは、私の近くにおられる、とある税理士先生なのです。ご本人は、「税理士でありながらこんなことを言うから、税理士仲間からはあまり相手にされていないんだよ」とおっしゃっていました。
例えば「減価償却」ということがあります。これは、税法においては任意となっております。しかし、健全経営を目指す会計指針の観点からは、償却すべきこととなっております。なぜならば、償却資産についてルール通り減価償却費を計上した上で獲得した利益が、会社にとっての真の利益と言えるからです。
ゴルフ会員権その他有価証券なども、帳簿には取得価額のまま掲載されていることが少なくありません。これらも時価評価ではいくらなのかを正しく見積もり、経営の実態を正しく把握する会計処理が重要なのです。
もちろん、こうした観点に立って、しっかりした会計処理をアドバイスしつつ、税務面の優遇措置なども十分活用する指導を行っている税理士さんも多いことでしょう。
むしろ、経営者側が、「今年は利益が出そうにないから、融資を受ける関係もあるので、何とか黒字決算にしといてくださいよ」と、税理士さんに依頼するような意識を改めるべき時代となっていることを認識すべきと考えます。